Nature Communications誌にACE2様酵素B38-CAPによるCOVID-19重症肺炎改 善に関する研究成果を発表しました。

久場敬司教授、山口智和助教を中心とした研究グループは、白神山地の土壌から分

離した微生物の産生するアンジオテンシン変換酵2 (ACE2) 様酵素B38-CAPが新型コロ

ナウイルス感染による重症肺炎に対して治療効果を発揮することを明らかにしまし

た。ACE2は新型コロナウイルス感染の受容体である一方で、ACE2の酵素活性は生理活

性ペプチドを分解することにより心不全やSARS肺炎の重症化を阻止することが知られ

ていました。今回、ハムスターやヒトACE2発現トランスジェニックマウスを用いた新

型コロナウイルスの感染実験により、B38-CAPがACE2様酵素として肺炎の重症化を阻

止することを明らかにしました。論文は11月23日にNature Communications誌にオン

ライン掲載されました ( https://doi.org/10.1038/s41467-021-27097-8 )。

 本研究では、まずACE2の酵素活性(生理活性ペプチドのC末端を切断する酵素活性

(カルボキシペプチダーゼ活性))が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する

効果を検討するために、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)誘発性の肺損傷に対する

ACE2様酵素B38-CAPの効果を検討しました。SARS-CoV-2を感染させたハムスターある

いはヒトACE2トランスジェニックマウスの肺では、内因性ACE2の発現が有意に低下

し、生理活性ペプチドであるアンジオテンシンIIの量が有意に上昇しました。

SARS-CoV-2の表面に存在するSpike三量体の組換え蛋白を調製し、塩酸吸引による急

性肺傷害のハムスターに投与したところ、同様にACE2の発現が低下し、アンジオテン

シンIIの血中濃度が上昇し、急性肺損傷の症状が顕著に悪化しました。B38-CAPは

ACE2相同因子としてACE2様の触媒活性部位を持つ一方で、SARS-CoV-2のSpikeには結

合せず、SARS-CoV-2の細胞侵入を抑制しませんでした。B38-CAPはSpike蛋白投与によ

り重症化した塩酸誘発性の急性肺傷害を改善しました。次に、SARS-CoV-2を感染させ

たハムスターにB38-CAPを投与したところ、ウイルスRNA量には影響を与えることな

く、肺水腫と肺損傷の病態を大幅に改善し、IL-6レベルも低下しました。さらに、ヒ

トACE2トランスジェニックマウスにおいても、B38-CAPはSARS-CoV-2誘発性の肺水腫

と肺損傷の病態を軽減し、肺機能の測定でも呼吸不全が改善することが分かりまし

た。

 以上の結果から、ACE2のカルボキシペプチダーゼ活性を補充する治療法が新型コロ

ナウイルス感染症の重症肺炎(ARDS/急性肺傷害)を改善するために有効な治療戦略

であるということが初めて明らかとなりました。本研究成果は新型コロナウイルスや

その他の原因による重症肺炎に対する新しい予防治療法の開発に結びつくことが期待

されます。

【プレスリリースの詳細】

https://www.akita-u.ac.jp/honbu/event/img/mix3111_01_dl.11

 

<論文タイトル> ACE2-like carboxypeptidase B38-CAP protects from SARS-CoV-2-induced lung injury.

<掲載雑誌>   Nature Communications 12, 6791 (2021)

     URL:  https://rdcu.be/cBR60

https://doi.org/10.1038/s41467-021-27097-8